2021年1月13日水曜日

火曜日の詩「朝の光」を公開しました

1月12日、12回目の「火曜日の詩」を公開しました。

今回は、新作「朝の光」を朗読しています。コロナ禍の中、多くの人がそうだと思いますが、私自身の生活も以前とは違うものなっています。このところ感じていること、考えたことを詩にしてみました。

今回から、字幕でテキストを見られるようにいたしました。YouTubeの字幕ボタン(CCボタン)で字幕をご覧いただけます。



テキスト全文はこちらです。

   「朝の光」

朝の光がカーテンを揺らす
この光が、昨日の光とどんなふうに違うかを考える
すぐに気づく、昨日のことをもう覚えていないことに
明日の光はどんなだろうと想像しようとする
しかしいま世界を満たすのはただ、今日の光だけだ

隣の街も朝の光で満たされている
街と街の間の野原も朝の光でいっぱいだ
進むものよ、本当に自分で決めたなら
とどまるものより勇敢だと思うな
とどまるものよ、本当に自分で決めたなら
進むものよりも賢いと思うな
誰とも比べる必要はない、あなたたちは勇敢で賢い
自分自身でそれを決めたのだから

この朝の光の中に六十億の嘘が漂っている
その後ろに真実が六十億と
嘘と真実が合わさったものにやさしさや欲望を振りかけた何かが六十億ずつ燃えている
今日もまた誰かが死ぬ
あなたとつながって、あるいはつながらず
その数だけがニュースになって
だが彼らは数字ではなく
この朝の光が訪れるまで生き続けたひとつひとつの命だった
今日もまた誰かが生まれる
あなたとつながって、あるいはつながらず
その数さえもニュースにならず
だが彼らは数字ではなく
新しい朝へと生きてゆくひとつひとつの命だ
わたしたちもいつかのある日にそんなふうに生まれた

この朝の光の中で
あなたが吸って吐く息のことを思う
あなたの心をかすめる稲妻を
あなたの魂に降る雨を思う
あなたのドアとわたしのドアの間を
はした金と罰と、開かれることのない祭りのチラシが流れてゆく
いま、手をつなぐことができないなら
このことだけは伝えさせてください
あなたが好きです
わたしたちの言葉は数字にはなりませんが
わたしたちの命のそばで、立ったり座ったりすることはできます

カーテンは朝の光に揺れている
ここはただの朝の光の中だ
これまでもここにもそこにもあそこにもあった
初めて訪れる朝の光の中だ

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※メイツ出版より、「外来生物のきもち」発売中です。全国書店にてご購入・ご注文頂けます。


ISBN 9784780423365
C2045
定価 本体1600円+税

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