2018年5月14日月曜日

あなたが望むなら

5月12日(土)、渋谷Last Waltzでの成宮アイコ企画「ハロー、言葉vol.0 あなたが望むなら」最高に楽しいイベントでした。

競演の成宮さん、猫道さん、内藤重人さんとは、それぞれ色々な場面で、違う形で繋がっています。青山祐己さんとは初対面でしたが、なんとなく、お会いして二秒くらいで「この人は信用できる人だ」と思いました。


言葉を大切にするとか、言葉を信じるとかいうのは陳腐なフレーズで、誰でも簡単に口にできるものですが、実際にこの夜、言葉、というものを一人ひとりの手にとり、各出演者とお客さん、それぞれの放出するエネルギーが一致して空間を満たす希有な瞬間が何度も感じられました。

最後の、「あなたが望むなら」というフレーズを各出演者が用いたセッションも、人を傷つけない、乱暴にならない高揚感がありました。自戒を込めて思いますが、人間というのは心の弱いもので、高揚感を覚えると、時として自分以外の世界を踏みにじるような表情をすることがよくあります。しかし、この夜の成宮アイコさん、内藤重人さん、猫道さん、青山祐己さんには、全くそういう要素がありませんでした。尊敬の念を覚えます。そしてそれは、この夜Last Waltzに集って下さったお客様が作り上げたものでもあると思います。

私は「あいするあなたへの手紙」「踊れ」「24時間スーパーの恋」「こんな悲しい日に」を朗読しました。

※撮影・成宮アイコさん

拡がりのある、vol.0から先への想像がふくらむ夜でした。

呼んで頂いたこと、いらして下さったお客様、この夜に連なる全ての縁に感謝します。

ありがとうございました。

また、近いうちに。

2018年5月10日木曜日

渋谷に雨が降る

GWも明け、5月7日(月)は渋谷RUBY ROOMで毎月第一月曜日に恒例、ポエトリーリーディングオープンマイクSPIRITでした。

この日のゲストは言葉の雨男・道山れいん。そのため大雨が降り、私が会場入りする時は道玄坂が滝みたいになっていました。しかし開場時刻には小降りになっており、ほっと一安心でした。足元の悪い中、多数のご来場ご参加、まことにありがとうございました。

道山れいんさんが初めてSPIRITにお客としてご来場下さったのは2015年の5月でした。それからの3年間の間に、詩集を二冊出版され、ポエトリー・スラム・ジャパン全国大会に出場し、詩を書き続け、様々な場面で読み続ける姿を目にしてまいりました。


詩にもいろいろあります。

勝つための詩もあれば、驚かすための詩、何かをアピールするための詩、認めてもらうための詩、楽しませるための詩、幸せにするための詩もあります。しかし、詩は、本当はどんな立場のどんな人のそばにも、何かを望むと望まざるとにかかわらず、常に静かに存在するものだと思います。全ての人は、例え本人が気づいていなくとも、詩ととももに生きているのです。この夜の道山れいんさんの朗読は、そのことをそっと思い出させてくれるものでした。

空気中の水分のひとつひとつの粒子に、詩が満ちていました。

オープンマイクに参加されたのは、

梓ゆい
ポテトチップス
藤原游
筒渕剛史
死紺亭柳竹
ジュテーム北村
笹仲
藤井コウ
春井環二
晴居彗星
yae
もこもこ

という皆様(敬称略)。一人ひとりの言葉と佇まいに、様々な「詩」の姿がありました。昨年の11月のtamatogiで、大島健夫賞を差し上げた藤井コウさんは、賞の特典として10分間の朗読を披露してくださいました。空気に満ちた水の粒子の上に、しなやかに、かつ確かに流れてゆく風のような朗読でした。

オープニングはURAOCBが、ラストは私が朗読しました。私は「今日は何色?(道山れいん作)」「近所のスーパーマーケット」「水の上を歩く」の三篇を朗読しました。

次回SPIRITは6/4(月)、ゲストは晴居彗星ともこもこの朗読ユニット・しずくろんです。どうぞお楽しみに!

☆☆☆

そして、ついに現実に追いついたこの日記。明後日12日(土)は渋谷Last Waltzにて、

<ハロー 、言葉 vol.0『あなたが望むのなら』>

に出演いたします。


18時開場/18時30分開演・前売2000円/当日2500円

▽出演
大島健夫/猫道(猫道一家)/内藤重人/成宮アイコ+青山祐己

ご予約は各出演者もしくは counter.roudoku@gmail.com まで。どうぞ是非お越しくださいませ。



2018年5月9日水曜日

モントリオールから渋谷へ

前回の日記の続きです。なかなか現実に追いつかない程度のスピードで書き綴っております。モントリオール時間の4月29日朝6時、トルドー空港をあとにしてデルタ航空で帰国の途につきました。

ミネアポリスで羽田行きに乗り換えると、機内はガラガラです。ゴールデンウィークの初めに帰国するというのはこういうことなんですね。手足を伸ばして大変快適に帰ってきました。日本に着くと30日の午後になっておりましたが、あまりにも時差があり過ぎて時差ボケにもなりません。ただ、涼しいモントリオールからいきなり摂氏23度の東京に降り立ち、「おえー、暑い」と思いました。

家には帰らず、スーツケースをゴロゴロ引きずって渋谷クロコダイルへ。この夜は谷川俊太郎トリビュートLIVE『俊読』に出演です。最後にシャワーを浴びてから20時間以上。自分が異臭を放っているのがわかったので、リハの前に急いで着替えました。

『俊読』に出演させて頂くのは、2016年に続いて二度目です。

この二年間で、自分自身の、詩に対する感じ方や味覚のようなものはずいぶん変わったと思います。いろんな経験をしましたが、詩、というものについて考えない日は一日もありませんでした。今日、たったいまこの時点での思いとともに、谷川俊太郎作『なつのゆきだるま』『にじ』、そして自作の『何もしない男』の3つの詩を朗読しました。

『俊読』に出演するということは、ある意味で、たった一発の弾を込めたピストルを手にしてステージに上がる、というようなことでもあります。いつ、どこで、どこへ向かってどう撃つのか。撃つのか撃たないのか。

一人ひとりの共演者の皆さんの姿に、そして、今もなお光の速さで進み続けている谷川俊太郎さんの背中に、心を打たれるものがありました。詩を書いて朗読を続けるということは、降りることのない山登りのようなものなのかもしれません。

家に帰った時、4月は終って5月になっていました。

2018年5月5日土曜日

モントリオール駆け足日記・4月28日

明けて現地時間4月28日。この日はスラムではなくライヴショーです。

ショーのオープニングは今回招聘されている3人のインターナショナルゲストの一人・フィリピン出身・オーストラリア在住の詩人・Eunice Andradaの詩『Last Days Of Rain』の輪読です。ただの輪読ではなく、受け持ちのパートごとに、Anatolならチェコ語、私なら日本語、Euniceならタガログ語、Amelieはフランス語、というふうにそれぞれの言語に翻訳したものを読んでいきます(これ、事前の準備が結構大変でした)。Anatolに至ってはその話がうまく伝わっておらず、リハの段階で「え、ウソ!今からすぐ訳すよ!」とかになっていました。

そのリハも英語とフランス語の指示が飛び交い、「たぶん要求されているのはこういうことだろう」という感じで動きます。立ち位置から歩数、マイクの角度まで細かく決めていきます。さらに、この日は詩人とミュージシャンのコラボパフォーマンスもあり、ミュージシャンとも「ああしてこうして、こんな感じで」という打ち合わせをしなければなりません。盛りだくさんです。全体の進行を仕切るのは、前日私とタッグを組んだJacquesおじさん。ボクシングのプロモーターを15年やっていたというJacquesさん、私が空手の黒帯だとわかると私のことを「センセイ」と呼び始め、バックステージで私をつかまえて、

「タケオ、おまえは『センセイ』としての役割を果たしてくれ。おまえはこの中で一番年上で、経験があり、異なる文化から来ている。その異文化を伝えつつ、ここにいるみんなをまとめ、ショーを成功に導くのだ」

リンゴをかじりながら壁に寄りかかって聞いていました(控室はなかなか充実していて、大きな冷蔵庫の10種類くらいの飲み物飲み放題・果物とお菓子食べ放題です)が、Jacquesおじさんの目が真剣なので、「そんなこと言われても困るわい」とも言えず、「OK、わかった」と返答します。

前日はみんな呼び出されるまで控室にいて気づかなかったのですが、舞台の袖から見ていると、開場から開演まで、ステージのスクリーンには各詩人のインフォメーションが順番に映し出されています。数秒間日の丸が映ったあと私の顔が大映しになり、それからプロフィールが映し出されるというのを何周も見ていると、やっぱりちょっと鼻くそをほじくったりしにくくなります。

・・・出順から立ち位置までリハではほとんど全員間違いまくりのボロボロだった『Last Days Of Rain』の輪読、本番ではバッチリでした。さすがです。

それぞれの詩人たちのミュージシャンとのコラボも、前の日のスラムとは趣が異なる、伸びやかなものとなりました。私は『うなぎ』『水の上を歩く』『踊れ』の3篇を朗読しました。『踊れ』の人気が高く、Jacquesさんの奥さんや音響さんにまでほめられました。英訳を作ってくれたヨーナス・エンゲスウィークさんとジョーダン・スミスさん、そして素敵な音を出してくれたミュージシャンの皆さんに感謝です。

最後はAmelieとEunice、それに地元ケベックのStephanieという3人の女性詩人によるコラボ朗読で締め、大盛り上がりで幕を閉じた『Richesse des langues』。みんなは打ち上げに向かいますが、残念ながら私はここでお別れです。なぜならば、すぐさま日本に飛んで帰って『俊読』に出なければならないからであります。

2018年5月3日木曜日

モントリオール駆け足日記・4月27日

連休ですね。

前回の日記がカナダのモントリオールより現地時間の4月26日午後11時。何があったか全部書いているとすぐ300ページくらいになりそうなのでそれは何か別の媒体でやることにして(誰か原稿書かせてくださいっ)、かいつまんで駆け足で振り返ります。

一夜明けて、天気もいいので街に散歩に出かけました。ケベック州ですから、看板などは全てフランス語。聴こえてくる会話、話しかけてくる人もみんなフランス語です。


街中にはたくさんのリスがいます。トウブハイイロリスです。中には白い個体も。





ハシボソキツツキなんかもいました。


今回はかなりスケジュールがタイトかつ、打ち合わせやリハが緻密です。あまり生き物に夢中になっていると遅れてしまいそうなので、ほどほどにして会場のMaison de la Culture Maisonneuveへ。



消防署をリノベしたものたそうです。中はどどーんと広く、1000人くらいは余裕で入りそうです。

今回の『Richesse des langues』、一日目がスラム、二日目がライヴショーです。

スラムは、各国から招聘された詩人と地元詩人がそれぞれタッグを組んでの団体戦です。私のパートナーはJacquesさん65歳。43歳の私と合わせてチーム108歳でのぞみます。


今回のスラムは、ちょっと変わったルールです。各国詩人と地元詩人が組んで白、赤、黒、青の四チームのタッグチーム を結成し、先鋒と次鋒を決めて、先鋒、次鋒それぞれで総当たりリーグ戦を行うという形式です。勝敗は点数ではなく、詩のボクシングの観客投票のようなというか紅白歌合戦のようなというか、観客全員がどちらかのチームの色のボードを掲げる方式です。見た目に差がはっきりしない時は「引き分け」になります。これはなかなかゲーム性が高く、面白いものです。

お客様は年齢層も幅広く、おじいさん、おばあさん、というような年齢の人たちも多いのはヨーロッパでのスラムと共通。ただ、その空気にはこれまでどこの都市でも感じたことのない不思議なおおらかさがあり、スラマーたちもみんな気合は入りつつも楽しそうです。

我々白チームこと『チーム108歳』、ものすごい僅差で優勝は逃しましたが、個人的にも得るものが非常に多いスラムでした。ありがとうJacquesさん!優勝はチェコのAnatolのチーム。このAnatolは面白い奴で、一緒にいると笑ってばかりいました。

私は『うなぎ』『ハムを買ってください』『蟹倉庫』の3篇を朗読したのですが、終演後、ベトナム人の若い女性が来て、

「私はこの街で移民や難民にフランス語を教える仕事をしている。あなたのハムと蟹の詩は、彼らが直面している状況そのものだ。特にハムの詩で、売れないとわかっているハムをそれでも必死で売ろうとするあの姿は、故国を離れた多くのベトナム人の姿を髣髴させる」

という感想を述べてくださいました。その他にもたくさんの人が次から次へと話しに来ます。これが海外のスラムの一つの醍醐味でもあります。

出演者・スタッフみんなで会場近くのあやしいバーで打ち上げをし、なぜか最後はみんなでマシュマロを焼いて食べ、宿へ戻ったのは午前2時でした。

そうして翌28日に続くのであります。