2018年5月5日土曜日

モントリオール駆け足日記・4月28日

明けて現地時間4月28日。この日はスラムではなくライヴショーです。

ショーのオープニングは今回招聘されている3人のインターナショナルゲストの一人・フィリピン出身・オーストラリア在住の詩人・Eunice Andradaの詩『Last Days Of Rain』の輪読です。ただの輪読ではなく、受け持ちのパートごとに、Anatolならチェコ語、私なら日本語、Euniceならタガログ語、Amelieはフランス語、というふうにそれぞれの言語に翻訳したものを読んでいきます(これ、事前の準備が結構大変でした)。Anatolに至ってはその話がうまく伝わっておらず、リハの段階で「え、ウソ!今からすぐ訳すよ!」とかになっていました。

そのリハも英語とフランス語の指示が飛び交い、「たぶん要求されているのはこういうことだろう」という感じで動きます。立ち位置から歩数、マイクの角度まで細かく決めていきます。さらに、この日は詩人とミュージシャンのコラボパフォーマンスもあり、ミュージシャンとも「ああしてこうして、こんな感じで」という打ち合わせをしなければなりません。盛りだくさんです。全体の進行を仕切るのは、前日私とタッグを組んだJacquesおじさん。ボクシングのプロモーターを15年やっていたというJacquesさん、私が空手の黒帯だとわかると私のことを「センセイ」と呼び始め、バックステージで私をつかまえて、

「タケオ、おまえは『センセイ』としての役割を果たしてくれ。おまえはこの中で一番年上で、経験があり、異なる文化から来ている。その異文化を伝えつつ、ここにいるみんなをまとめ、ショーを成功に導くのだ」

リンゴをかじりながら壁に寄りかかって聞いていました(控室はなかなか充実していて、大きな冷蔵庫の10種類くらいの飲み物飲み放題・果物とお菓子食べ放題です)が、Jacquesおじさんの目が真剣なので、「そんなこと言われても困るわい」とも言えず、「OK、わかった」と返答します。

前日はみんな呼び出されるまで控室にいて気づかなかったのですが、舞台の袖から見ていると、開場から開演まで、ステージのスクリーンには各詩人のインフォメーションが順番に映し出されています。数秒間日の丸が映ったあと私の顔が大映しになり、それからプロフィールが映し出されるというのを何周も見ていると、やっぱりちょっと鼻くそをほじくったりしにくくなります。

・・・出順から立ち位置までリハではほとんど全員間違いまくりのボロボロだった『Last Days Of Rain』の輪読、本番ではバッチリでした。さすがです。

それぞれの詩人たちのミュージシャンとのコラボも、前の日のスラムとは趣が異なる、伸びやかなものとなりました。私は『うなぎ』『水の上を歩く』『踊れ』の3篇を朗読しました。『踊れ』の人気が高く、Jacquesさんの奥さんや音響さんにまでほめられました。英訳を作ってくれたヨーナス・エンゲスウィークさんとジョーダン・スミスさん、そして素敵な音を出してくれたミュージシャンの皆さんに感謝です。

最後はAmelieとEunice、それに地元ケベックのStephanieという3人の女性詩人によるコラボ朗読で締め、大盛り上がりで幕を閉じた『Richesse des langues』。みんなは打ち上げに向かいますが、残念ながら私はここでお別れです。なぜならば、すぐさま日本に飛んで帰って『俊読』に出なければならないからであります。

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